TASC技術の応用

 

1.   繊維強化プラスチックから強化繊維の回収とリサイクル

TASC技術の応用FRP

コンクリートを鉄筋で強化したのが、鉄筋コンクリートであり、同様にポリマーを強化繊維で強化したのが繊維強化プラスチック(FRP)である。TASC法により、炭素繊維FRPのポリマー母体のみを完全分解し、カーボン・ファイバーの織布をほぼ無傷の状態で回収・リサイクルすることができる(写真)。

2.   VOC(Volatile Organic Compound: 揮発性有機化合物)、悪臭等の完全浄化

TASC技術の応用VOCモンゴル

有機溶剤をはじめとするVOC、ディーゼル排気ガス、タバコ煙、悪臭、油煙等を一瞬にして水と二酸化炭素に完全浄化することが可能である。VOCの中に硫黄、ハロゲン、ケイ素などを含むガスについても対処することができる。その他、オフィス・プリンターや産業用インクジェット・プリンターのVOC処理にも有効である。

3.   タールの除去

TASC技術の応用タール

バイオマス発電で配管内に発生するタール(写真)、炭素粉からグラファイトを製造する工程、さらに窯業の炉から発生するタール、ならびに悪臭は製造工程における大問題である。タール成分が凝縮する前の“ミスト状態”でVOC浄化装置を通過させることにより、タールを完全除去できる。

4.   レア・アース、レア・メタル等の金属の回収

TASC技術の応用レアアース

ボンド磁石からポリマー成分のみを分解し、磁性材料を粉末の形で回収することができる(写真:上部2箱内はボンド磁石、下部4本は回収された磁性粉末)。また、モールド・モーターからローター、ステーターの回収や、廃電車のモーター等からの銅線等の回収も可能である。

5.太陽電池パネルの解体と有価物の回収

太陽電池

太陽電池は再生可能エネルギーの花形であるが、10年後には“寿命を終えたパネル”の回収が始まることが確実視されている。我々はTASC技術を使い、パネル内のポリマー成分をクリーンな形で完全分解し、パネルの解体、ならび有価物(ガラス、シリコン・ウェファー、銀をはじめとする電極材料)の回収に成功した。

6. 木質バイオマス発電:タール・フリーのガス化システム

木質バイオマス発電

「半導体の熱活性(TASC)」技術はポリマーのような巨大分子を“みじん切り”にして、小分子化する技術である。これまで、TASCの応用として、気体(VOC、悪臭、タール、タバコ煙等)の浄化、ならびに有機固体(プラスチック等)の完全分解と有価物のリサイクルについて検討を進め、これらを総合論文として纏めた。[日本金属学会誌 80, 297-308 (2016)] 今回、TASCの新たな応用として、木質バイオマス発電におけるタール・フリーのガス化システムを確立した。

再生可能エネルギーとしての研究が進み、現在では全エネルギーの15%を賄える状況である。この中で、太陽光発電や風力発電は天候に左右され、有効稼働時間に大きな制限がある。これに対し、木質バイオマス発電の稼働率は80-90%で、日照時間や天候の影響を受けることはない。しかし、木質バイオマスを資源とした発電には、バイオマスのガス化の過程で不可避的に発生するタールが発電の妨げとなっている。つまり、微量のタールであっても、タールは発電機の中で炭化し、発電機を停止させる。この問題の究極の解決法はタール発生が皆無のガス化プロセスの開発と言える。

我々はまず“木質バイオマスは植物ポリマー”であることに注目し、さらに、タールの発生源となる成分を明らかにした。バイオマスは鎖状ポリマーであるセルロース、ヘミセルロース、さらに芳香族ポリマーであるリグニンから構成されている。この中で、鎖状の高分子(セルロース&ヘミセルロース)を小分子化するのはそれ程、難解ではないとしても、熱安定性を標榜する「芳香族ポリマー」(リグニン)を単に加熱分解するだけで、可燃燃料にするのは至難の業と言える。現実的には、可燃燃料の他に、芳香環を持ったタール成分が残存することは周知の事実である。しかし、リグニンのような芳香族ポリマーを、都市ガス成分のレベルまで“みじん切り”に出来る技術があれば、タール・フリーのガス化が実現可能である。これを実現するのが、芳香族ポリマーであるフェノール樹脂等の分解にも実績のある、我々の「半導体の熱活性(TASC)」法である。つまり、植物ポリマーであるバイオマスも、TASC法で容易に小分子化が行えると考えた。

バイオマスの小分子化で使用する酸化物半導体は、最も安価で無尽蔵に存在する鉄の酸化物(α-Fe2O3)の赤錆である。この赤錆で木質バイオマスを被覆し、これを500°C、酸素欠乏状態の下で加熱処理を行い、バイオマスをタール・フリーの可燃ガスとするのが基本原理である。冒頭の写真に無垢のバイオチップと赤錆で被覆したバイオチップを示す。

実際のプロセスの詳細については「環境浄化技術」誌(日本工業出版)9月号(2017)、ならびに特願2017-16135を参照されたい。

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